鍔鳴

ちりり。ちりり。ちりり…


冴えた震えた澄んだ音。
腰に帯びた剣が鳴く。
冷たい厳しい風が哭く。


きりきり胸が痛むのは己を騙す姑息さか。


ちりり。ちりり…
非情で過酷で血腥い、北の荒野を渡るのは
人ならざりし異形達、人を屠る獣達、そしてそれらを狩る者達。


無事で戻ると誓う者。
生きて戻れと願う者。


ちり、り。ちり…
剣と共に、俺も泣く。
願いをここに、抱いて啼く。


ぎりぎり唇噛み締めて、進むべき道見据えつつ。


泣くが仕事の幼子と、我が身は天地の違いあり。