あいつ

友人に、エリシャという吟遊詩人がいる。
あいつは旅団に入る前からの友人で、クーの歌の師匠でもあるんだけど
見かけはおっとりだけど、寝起き最悪で、俺なんか一回寝惚けたあいつに
剣を突きつけられたことがあったw
柔和に見えて、強い。だけど弱さというか、危なっかしいとこがある。
そんなあいつのこと。


色々なドラゴンズゲートをまわるのが面白いのだとあいつは言う
毎日のように新たな冒険を、力を求めて強くなっていくあいつは
詩人のくせに、あっという間に剣士みたいな凄腕になっちまって

のんびりとした口調 不器用で滅多に怒らない
優しいけど色々抱えてそうなことぐらいわかってた
だけど

何だかアンタが遠くなったみたいだよ
夢見が悪いとか 何かあったら殺してくれとか
アンタどうしちまったんだ?

力を求め過ぎて狂ってしまいそう
そうなったら殺してくれますかとアンタは言う

それに応える友人が いつの間にかアンタには出来てたんだな

何だかアンタが遠くなったみたいだよ
背中を預けられる人は 俺じゃない誰か
「あなたは一番の友人じゃありません」
そう、いつもののんびりとした口調で言われた気がして
俺は矮小でワガママだったんだなと気付く
そんなこと 関係無いのにな

大丈夫です
そんな言葉が似合わない
あいつは笑顔で無理をする
あいつは笑顔で自分を隠す

そんなのあいつの勝手だろ
俺は何に腹を立ててるんだろう
違うな、少し寂しいのかも

狂ったら殺してくれっていうアンタの希望には応えてはやらないけど
一番じゃなくても 俺はアンタの友人でありたい
背中を任せられなくても 少しでもあいつの支えになれたら
そう、思う